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蛤のふたみにわかれ行秋ぞ
のりて るに長月六日になれば伊勢の遷宮おがまんと又舟に がごとく且悦び且いたはる旅の物うさもいまだやまざ 其外したしき人
々日夜とぶらひて蘇生のものにあふ
越人も馬をとばせて如行が家に入集る前川子
・荊口父
にたすけられて大垣の庄に入ば曽良も伊勢より来り合  
露通も此みなとまで出むかひてみの
ゝ国へと伴ふ
其日のあらまし等栽に筆をとらせて寺に残す  
 
波の間や小貝にまじる萩の塵
 

寂しさや須磨にかちたる濱の秋
さびしさ感に堪たり しき法花寺あり爰に茶を飲酒をあた
ゝめて夕ぐれの
追風時のまに吹着ぬ濱はわづかなる海士の小家にて 筒などこまやかにした
ゝめさせ僕あまた舟にとりのせて
舟を走す海上七里あり天屋何某と云もの破籠
・小竹
 
十六日空霽たればますほの小貝ひろはんと種の濱に
 

名月や北国日和定なき
 
十五日亭主の詞にたがはず雨降
 

月清し遊行のもてる砂の上
遊行の砂持と申侍る


亭主のかたりける
煩なし古例今にたえず神前に真砂を荷ひ給ふこれを から草を刈土石を荷ひ泥渟をかはかせて参詣往来の とし

往昔遊行二世の上人大願発起の事ありてみづ
松の木の間に月のもり入たるおまへの白砂霜を敷るがご けいの明神に夜参す仲哀天皇の御廟也社頭神さびて 猶明夜の陰晴はかりがたし


あるじに酒す
ゝめられて

あすの夜もかくあるべきにや


といへば

越路の習
夕ぐれつるがの津に宿をもとむその夜月殊晴たり 峠を越れば燧が城かへるやまに初鴈を聞て十四日の をわたりて玉江の蘆は穂に出にけり鴬の関を過て湯尾
漸白根が嶽かくれて比那が嵩あらはるあさむづの橋
らんと裾おかしうからげて路の枝折とうかれ立 まりて名月はつるがのみなとにとたび立等栽も共に送 そか
ゝる風情は侍れとやがて尋あひてその家に二夜と
といふかれが妻なるべしとしらるむかし物がたりにこ あたり何がしと云もの
ゝ方に行ぬもし用あらば尋給へ



いづくよりわたり給ふ道心の御坊にやあるじは此
くすさては此うちにこそと門を扣ば侘しげなる女の出 夕顔
・へちまのはえか
ゝりて鶏頭は
ゝ木
ゝに戸ぼそをか
て そこそこと教ゆ市中ひそかに引入てあやしの小家に ひて有にや将死けるにやと人に尋侍ればいまだ存命し か江戸に来りて予を尋遥十とせ餘り也いかに老さらぼ の路たどたどし爰に等栽と云古き隠士有いづれの年に  
福井は三里計なれば夕飯した
ゝめて出るにたそがれ
とかや 千里を避て
ゝる山陰に跡をのこし給ふも貴きゆへ有
 
五十丁山に入て永平寺を礼す道元禅師の御寺也邦機
 

物書て扇引さく余波哉
聞ゆ今既別に望みて
々の風景過さず思ひつ
ゞけて折節あはれなる作意など
いふものかりそめに見送りて此処までしたひ来る  
丸岡天龍寺の長老古き因あれば尋ぬ又金沢の北枝と
を立るがごとし 此一首にて数景尽たりもし一辧を加るものは無用の指  
 

月をたれたる汐越の松

西行
 
 
終宵嵐に波をはこばせて
 
越前の境吉崎の入江を舟に棹して汐越の松を尋ぬ
とりあへぬさまして草鞋ながら書捨つ  
 
庭掃て出ばや寺に散柳
の柳散れば き僧ども紙
・硯をか
ゝえ階のもとまで追来る折節庭中
けふは越前の国へと心早卒にして堂下に下るを 明ぼの
ゝ空近う読経声すむま
ゝに鐘板鳴て食堂に
と残す一夜の隔千里に同じ吾も秋風を聞て衆寮に臥  
 
終宵秋風聞やうらの山
曽良も前の夜此寺に泊て  
大聖持の城外全昌寺といふ寺にとまる猶加賀の地也


今日よりや書付消さん笠の露
かれて雲にまよふがごとし予も又 と書置たり行もの
ゝ悲しみ残もの
ゝうらみ隻鳧のわ


行行てたふれ伏とも萩の原

曽良
先立て行に  
曽良は腹を病て伊勢の国長嶋と云所にゆかりあれば
なりぬ 功名の後此一村判詞の料を請ずと云今更むかし語とは 辱しめられて洛に帰て貞徳の門人となつて世にしらる 誹諧を好み洛の貞室若輩のむかし爰に来りし比風雅に  
あるじとする物は久米之助とていまだ小童也かれが父
 

山中や菊はたおらぬ湯の匂
 
温泉に浴す其功有明に次と云
 

石山の石より白し秋の風
殊勝の土地也 古松植ならべて萱ぶきの小堂岩の上に造りかけて と也那智
・谷組の二字をわかち侍しとぞ奇石さまざま
給ひて後大慈大悲の像を安置し給ひて那谷と名付給ふ の山際に観音堂あり花山の法皇三十三所の順礼とげさせ  
山中の温泉に行ほど白根が嶽跡にみなしてあゆむ
 

むざんやな甲の下のきりぎりす
し事共まのあたり縁記にみえたり 仲願状にそへて此社にこめられ侍よし樋口の次郎が使せ 金をちりばめ龍頭に鍬形打たり真盛討死の後木曽義 ものにあらず目庇より吹返しまで菊から草のほりもの に属せし時義朝公より給はらせ給とかやげにも平士の  
此所太田の神社に詣真盛が甲
・錦の切あり往昔源氏

 































松尾芭蕉著





西村本






















奥の細道図屏風-大垣 (山形美術館所蔵) ◇大垣 奥の細道絵巻-種の浜 (朝日山法圓寺所蔵) ◇種の浜 ◇敦賀 奥の細道画巻-福井 (京都国立博物館所蔵) ◇福井  
永平寺
 
天龍寺
◇汐越の松
奥の細道画巻-全昌寺 (逸翁美術館所蔵) ◇全昌寺 奥の細道画巻-山中 (京都国立博物館所蔵) ◇山中 ◇那谷 ◇小松