松尾芭蕉の旅 おくのほそ道
俳聖 松尾芭蕉・生涯データベース
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おくのほそ道
殺生石の章段










是より殺生石に行。館代より馬にて送らる これより殺生石に行く。館代が馬で送ってくれた。
口付のおのこ、短冊得させよと乞。やさしき事を望侍るものかなと、 この馬を引く男が「短冊に一句書いてくれませんか」とせがんだ。風流なことを望むものだと感心し、応えてあげた。
_野を横に馬牽むけよほとゝぎす どこやらでほととぎすが鳴いているよ。さあ、聞こえる方に馬を差し向けて、いっしょに聞こうではないか。
殺生石は温泉の出る山陰にあり。 殺生石は温泉の出る山陰にある。
石の毒気いまだほろびず。蜂蝶のたぐひ真砂の色の見えぬほどかさなり死す。 石の毒気はいまだになくなっていない。蜂や蝶のたぐいが、地面の砂の色が見えないほど重なって死んでいた。
   
[ 旅のあらすじ ]

四月十六日(新暦六月三日)、長逗留の黒羽に別れを告げ、浄法寺桃雪(図書)が用意した馬で殺生石を目指した。奥州街道に出たところの野間村[資料]まで馬に乗り、その後、越堀宿の出口手前から左に切れて那須街道を行き、途中、高久の名主高久覚左衛門宅に立ち寄った[資料]。しかし、折からの雨のため、同家に宿泊。翌四月十七日(新暦六月四日)も天気が回復せず、引き続き覚左衛門宅に滞留するところとなった。
十六日 天気能。翁、館ヨリ余瀬ヘ被立越。則、同道ニテ余瀬ヲ立。及昼、図書・弾蔵ヨリ馬人ニテ被送ル。馬ハ野間ト云所ヨリ戻ス。此間弐里余。高久ニ至ル。雨降リ出ニ依、滞ル。此間弐里半余。宿角(覚)左衛門、図書ヨリ状被添。
(「随行日記」)


四月十八日(新暦六月五日)、朝の内に雨が止み、正午ごろ高久家を後にする。芭蕉は覚左衛門が用意した馬で松子まで行き、その後、三里の道を歩き、午後二時半ごろ湯本に到着した。止宿先は、殺生石から1km
ほど離れた「和泉屋」だったと伝えられる。「和泉屋」は、湯本で五十五代にわたって湯宿を営んだ老舗だったが、昭和六十一年(1986)に廃業し、現在、その敷地は隣りの旅館「清水屋」の一部になっている。

四月十九日(新暦六月六日)、芭蕉は、宿主五左衛門の案内で温泉神社に参詣し、その後、「賽の河原」にあり「九尾の狐」の成れの果てとして知られる「殺生石」を見物した。
高久・宿泊の地 高久で書いた句文 那須温泉神社 湯元・鹿の湯 殺生石
 
 
 




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殺生石

[語 釈]

殺生石
那須湯本温泉の源泉「鹿の湯」の北側に、山肌がむき出しとなった「賽の河原」の谷あいがあり、この奥に那須火山が噴き出した巨石がいくつか見られる。旧跡「殺生石」は、その内の1つ。全身を金色の毛で覆い、九本の尾をもつという伝説の妖狐「白面金毛九尾の狐[資料]」が化けた姿と伝えられる。
館代より馬にて送らる
「館代」は、黒羽藩の城代家老浄法寺高勝(通称図書、俳号桃雪、秋鴉)[資料]のこと。

「馬にて送らる」は、桃雪が用意した馬で奥州街道の宿駅・野間まで送られたことを指す。「随行日記」に「十六日 (中略)及昼、図書・弾蔵ヨリ馬人ニテ被送ル。馬ハ野間ト云所ヨリ戻ス」とある。
口付のおのこ
馬の手綱をとる男。「おのこ」に「召使の男、下男」の意もある。
やさしき事
「やさし」に「情趣に富む」といった意もあることから「風流なこと」。
野を横に馬牽むけよほとゝぎす
以下は、土芳編「蕉翁文集」に載る本句の前書。

那須の原はるばると行ほど、其さかひに知る人ありければ、馬にて送られけるに、口付のおのこいかゞおもひけん、一句仕(つかまつり)て得させよなむどいへば、お(を)かしく興ありて、異(こと)に思ひて、矢立さしぬらして、馬上において書遣ス。
(「蕉翁文集」)
温泉の出る山陰
「山陰(やまかげ)」は、山の麓で陰になるところ。「随行日記」に「一九日 (中略) 温泉(神社)ヘ参詣。(中略) 夫ヨリ殺生石ヲ見ル。宿五左衛門案内。以上湯数六ヶ所」とある。

日記にある「温泉神社」は、「那須温泉神社(なすゆぜんじんじゃ)」で、略記によれば、奈良朝のころ茗荷沢の住人狩野三郎行広が、矢傷を負わせた白鹿をこの地まで追ったときに、温泉の神の力添えで温泉を発見でき、村人がこの神の恩に報い神社を建てたのに始まる。祭神は大己貴命と少彦名命で、相殿に男山八幡(石清水八幡。誉田別命)を祭る。

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「おくのほそ道」のテキストについて


本テキストは、俳聖 松尾芭蕉・生涯データベース
および、FLASHムービー「 おくのほそ道を行く」の副読本
としてLAP Edc. SOFTが制作したものです。




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